レガシーシステムとは?「2025年の崖」問題やマイグレーションの必要性について


IT技術を活用し、ビジネスや組織を変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が推進されています。しかし、DXの成功事例は現段階でほとんど見られません。これにはさまざまな要因がありますが、一つには、企業が進めるDXが概念実証に留まり、現場レベルでの構造変革につながっていないことが挙げられます。そして、その構造改革を妨げるものが、「レガシーシステム」だと言われています。

目次

レガシーシステムとは?

一般的にレガシーシステムとは、導入時から相当な時間が経過し、最新テクノロジーの恩恵を受けるための拡張性や保守性が低減しているシステムを指します。また、企業が利活用する汎用コンピューター(メインフレーム)の基幹システムを意味するケースもみられます。
「レガシー(Legacy)」は、「受け継いだもの」や「遺産」といった意味を持つ言葉で、本来ポジティブな意味合いで用いられます。しかし、情報システムの世界では、“時代遅れで古くなったネガティブなもの”として、語られるケースがほとんどです。
企業が抱えるレガシーシステムは、システム提供者が何十年も前にオーダーメイド型で独自開発したものが多く、法改正や業務改善などの度にパッチ(プログラムを部分的に修正したり、更新したりするために利用する追加データ)を適用し、対応してきた経緯があります。このため、システムが非常に複雑な構成になっているケースが多いと言われています。

レガシーシステムの課題、経産省が指摘する「2025年の崖」について

レガシーシステムの存在がDXの足かせとなるリスクについて、端的に表現されたものが「2025年の崖」でした。これは2018年秋に、デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会(経済産業省)が発表したDXレポートにて、初めて提唱された言葉です。

DXレポート
2025年の崖は、企業がレガシーシステムを放置することでDXが阻害されたり、既存の基幹システムのサポートが終了する2025年以降、国内で大規模な経済的損失が発生したりすることを意味します。同研究会は、2025年の崖でシステムトラブルのリスクが高まるほか、既存システムの維持管理費などが高額になることを指摘。2025~2030年の間で、年間最大12兆円の経済損失が生じると予想しています。 これは、システムの過剰なカスタマイズや、事業部門ごとのシステム構築などにより、企業の基幹システムが複雑化したりブラックボックス化したりしていることが主な原因とみられます。
また、基幹システムの刷新では、業務自体の見直しが求められる場合もあるため、経営陣と現場サイドとの間で溝が生まれるケースも報告されているようです。「DXレポート2」はこちらをご覧ください。

詳しくはこちらのコラムで解説しています。

レガシーシステムの利用継続で発生する具体的な問題とは


技術や人材の面でさまざまなリスクのあるレガシーシステムですが、継続して利用し続けると具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。
以降、4つのケースに分けて、それぞれ紹介します。

1.システム障害の発生

レガシーシステムを使い続けると、最新のプログラムや、要求される情報処理の能力・量に対応することが難しくなるため、システム障害が発生するリスクが高まります。また、補修や機能追加などを度々繰り返し、ブラックボックス化したレガシーシステムでは、対応に時間がかかり、システム障害が重症化する傾向があると言われています。
なお、独立行政法人の情報処理推進機構が2016年に発表した調査報告書によると、システム障害による経済的損失は国内企業1社当たり約2億1,900万円。また、国内全体では約4兆9,600億円だったといい、システム障害による経済的損失がいかに大きいかが分かります。

2.パフォーマンスの低下

パッチ適用など、度重なるカスタマイズが行われてきたレガシーシステムは、システムのパフォーマンス低下をもたらします。例えば、一定量のデータを集めて一括処理を行うバッチ処理の夜間実施では、古いシステムだと処理に膨大な時間がかかるため、処理やバックアップ作業が業務の開始時間までに終了しないといった問題が発生するでしょう。また、不要なソースの大量発生などによって、ユーザーがシステムをスムーズに動かせなくなるかもしれません。

3.IT人材の不足

レガシーシステムを使い続ける企業では、古いテクノロジーに対応できる技術者が高齢化したり毎年退職したりして、人材の確保が年々難しくなります。
例えば、1950年代に開発されたプログラミング言語「COBOL(コボル)」。この言語は現在もアップデートされ続けており、オブジェクト指向やオープン化といった多様なプログラミング開発の手法にも対応しています。しかし、古い言語であるがゆえに、対応できる技術者の多くは高齢者です。従って、基本構造を理解した上で処理ができる技術者の数が減少する以上、企業は常に人材確保の問題に直面することになるのです。

4.ビジネス上の障害

環境が目まぐるしく変化し、ビジネスなどに対する将来予測が難しいVUCA(ブーカ)の時代では、求められるシステム要件が次々に変わり、システムのアップデートが日々求められます。こうした状況の下でレガシーシステムを使い続けると、臨機応変に更新することができず、ビジネスの遅延を招くかもしれません。また、最新のシステムを導入していないことで互換性が失われ、クライアントなどが取引先を変更するリスクも発生するでしょう。

レガシーシステムの刷新に向けて

レガシーシステムを刷新する前に大切なことは、基幹システムの運用・保守などに関する現状の分析です。これは、どのシステムにどのような機能が実装されていて、現場レベルではどのような運用が行われているのかを把握し、整理することです。
現状分析の次に、どの範囲をどのレベルで刷新するかというスコープを定義し、そのための社内体制を整える必要があります。特に後者については、IT技術やマネジメントなどの能力が高い人材をプロジェクトマネジャーに充て、メンバー間の潤滑油として機能させましょう。
また、中小企業や小規模事業者などは、レガシーシステムの刷新で補助金の活用も視野に入れましょう。経産省などが行う「IT導入補助金」の制度を利用すると、ツールの導入に掛かる一部の費用を国が負担してくれます。補助の対象者は資本金や従業員数などによって異なるため、まずはWebサイトを確認してください。

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レガシーシステムへの対策方法

レガシーシステムの刷新では、「モダナイゼーション」と「マイグレーション」の実施が重要なポイントです。以下、それぞれの具体的な手法や進め方などを解説していきます。

モダナイゼーション

モダナイゼーションとは、近代化や現代化を意味する英単語「Modernization」が語源で、ITの領域では、蓄積したデータやプログラムなどのIT資産を活かしながら、現在稼働中のソフトウェアやハードウェアを新しい製品や設計で置き換えることを表します。

モダナイゼーションの主な手法には、

  1. 古くなったり破損したりした基幹システムを、新しいシステムや同等の機能を兼ね備えた別のシステムに置き換える「リプレース」
  2. 基幹業務用で活用される古い大型コンピューターやオフィスコンピューターなどで稼働する業務システムなどを、クラウドシステムなどで構築された新システム基盤に移し替える「リホスト」
  3. 新しいプログラミング言語などを活用し、既存のソフトウェアと同じように動くソフトウェアを新しい機種やOS向けに開発し直す「リライト」

などが挙げられます。

マイグレーション

マイグレーションは、移動や移住、移転を意味する英語のMigrationを語源で、ソフトウェアやハードウェアのシステム、また蓄積されたデータなどを別の環境に移転したり、新環境に切り替えたりすることを表す言葉です。マイグレーションの手法には、システムの移行を目的とした「レガシーマイグレーション」、データの移行を目的とする「データマイグレーション」が挙げられます。

マイグレーションの基本的な進め方
1.現状分析現行資産の棚卸し、要件定義、移行方針の検討、移行ボリュームの見積など
2.開発言語を書き換えるリライト、システム全体を再構築するリビルドなど
3.テストと移行新旧比較テスト、総合テストなど
4.本番での運用並行稼働、本番稼働、保守運用開始など

株式会社シーイーシーでは、レガシーシステムに潜むリスクを洗い出し、時代に即した新システムへと再生させるワンストップ型のマイグレーションサービス「Re@nove(リノーブ)」を提供しています。
同サービスでは、戦略的なICT投資を可能する新システムを再構築。蓄積された業務ノウハウを損なうことなく、運用・保守に関するコストの削減や、拡張性の確保などの新たな価値を産出します。
詳しくはこちらのコラムで解説しています。

無料でレガシーシステムの診断も実施

レガシーシステムに関する理解は深まったでしょうか。2025年の崖が示しているように、レガシーシステムの刷新は企業にとって今後重要な課題です。リスクの低減などを行うためにも、なるべく早い段階で着手することをおすすめします。

弊社サービスの「Re@nove(リノーブ)」では、現行システムの移行によるインパクトを無料で診断しています。レガシーシステムの刷新などにお困りの方は、気軽にお問い合わせください。

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