「ものづくり人材」が活躍するスマートファクトリーとは?- CEATEC 2019レポート
2019年10月15日から18日の4日間、千葉県千葉市の幕張メッセで「CEATEC 2019」が開催されました。本コラムでは、製造業・物流業で深刻化する「ものづくり人材」不足の解消に向けて、スマートファクトリーを実現する最新ソリューションや事例を豊富に紹介した、コンファレンスセッションの様子をレポートします。
不足する技能人材。自動化・省人化が生き残りの鍵に
10月18日に行われたコンファレンスセッションには、シーイーシー 常務取締役の立石博が登壇し、「”ものづくり人材”が活躍するスマートファクトリー」をテーマに、製造業・物流業でのデジタル活用について、豊富な事例を交えて紹介しました。多くの企業がスマートファクトリーに関心を寄せており、会場は満席の参加者で埋まりました。
ものづくり企業にとって、人手不足は深刻な課題です。経済産業省の「2019年版 ものづくり白書」によれば、国内の製造業で、人材確保の課題が顕在化しつつある企業は約95%にも上ります。確保に課題がある人材のうち55%は技能人材となっています。こうした状況を受けて、ロボット、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)といったテクノロジーを活用した自動化や省人化への期待が高まっています。
シーイーシー 常務取締役 立石博
そこで、シーイーシーが提案するのが、AIとIoTを活用した「生産性向上」と「労働環境改善」です。立石はそのポイントとして「生産活動の数値化」「通知・指示での効率化」「技能のデジタル化」という3点を挙げ、それぞれに役立つ多様なソリューションと、活用事例を紹介しました。
分析時間を90%以上短縮。作業計測・分析システム「SmartLogger(スマートロガー)」
作業動態を数値化するソリューションが、作業計測・分析システム「SmartLogger(スマートロガー)」です。スマートフォンやスマートウォッチをビーコンにかざすだけで、作業内容や時間を簡単に計測できます。作業改善の際に行う計測・分析時間を従来の10分の1以下に短縮でき、人手ではできなかった複数人や長時間での分析もできるようになります。会場では、ピッキング作業を自動計測する様子が動画で紹介され、参加者は興味深そうに見入っていました。
フォークリフトの移動距離が半分に。3D動線分析システム「RaFLOW(ラフロウ)」
ピッキングエリア、フォークリフト、生産ラインなどの作業動線の把握に役立つソリューションが、3D動線分析システム「RaFLOW(ラフロウ)」です。位置センサーから測位データを収集し、作業員の動きや滞留を3D空間に「見える化」します。ある企業では、フォークリフト動線の分析に活用して、短時間の分析時間で、移動距離4600メートルを2300メートルへと半減できたそうです。
作業のムダを可視化・分析。工場情報基盤システム「Visual Factory」
工場の設備・人・モノを可視化するソリューションが、工場情報基盤システム「Visual Factory(ビジュアルファクトリー)」です。工場のリアルタイム監視を実現し、迅速な意思決定を支援します。設備総合効率(OEE)の評価や、設備稼働時間の内訳の算出、7大ロスと呼ばれる停止理由の分析などを簡単に行えます。会場では、さまざまなチャートやグラフの表示画面が紹介されました。
作業の通知でロスの削減。ウェアラブル型作業者支援システム「SmartFollow」
作業通知による省力化を実現するのが、ウェアラブル型作業者支援システム「SmartFollow(スマートフォロー)」です。設備やセンサーから発生したアラームを、作業員の位置やスキルを考慮して、最適な作業員のスマートフォンやスマートウォッチにリアルタイムで通知します。作業員が対応可否を回答できるため、手が空かないときは応援を呼ぶことが可能です。加工プログラムを参照し、進捗が80%に達した段階で完了予定を事前通知することで、工程間の作業ロスを減らした例もあるそうです。
スマートグラスで言語翻訳・遠隔指示。スマートデバイス/作業者支援システム「EdaGlass」
スマートグラスを活用した作業者支援ソリューションが「EdaGlass(エダグラス)」です。遠隔拠点間の作業支援や翻訳やテキスト化によるコミュニケーション機能があり、作業を支援します。会場では、製造・物流現場での活用シーンが動画で紹介されました。言葉の壁のある作業員と確実なコミュニケーションを取るために、日本語で話している内容を英語に変換してスマートグラスにテキスト表示する様子や、スマートグラスを通じて送信される現場の映像を見ながら、遠隔地にいる熟練技能者が作業を指示する様子が映し出され、会場全体が真剣な表情で見ていました。
トヨタ自動車様にも導入。AIを活用した高精度画像検査システム「WiseImaging」
AIとディープラーニングを活用して、検査を自動化するソリューションが、高精度画像検査システム「WiseImaging(ワイズイメージング)」です。トヨタ自動車株式会社 鍛造部様に導入され、「見逃し率32%から0%への減少」「過検出率35%から8%への減少」など、大幅な検査精度の向上に貢献しました。立石は「どこに注目して判定したのかを可視化できるヒートマップ機能が、採用の決め手となりました」と明かしました。
トラック待機を1時間に短縮。物流向けトラック積載効率化ソリューション「LogiPull」
物流分野の事例としては、トラック積降効率化ソリューション「LogiPull(ロジプル)」が紹介されました。トラック輸送の課題である「待機時間の長時間化」「入出荷作業負荷の増大」「トラック渋滞」を、「積み降ろしバースの事前予約」「自動料金収受システム(ETC)による受付自動化」「センサーやタッチパネルを活用したバース実績管理」などで解決します。ヤマゼンロジスティクス株式会社様では、バース予約管理システムを導入して車両の分散化に成功。従来は夕方までかかっていた車両の待機時間が、平均1時間にまで短縮されました。
DX時代の「ものづくり人材」育成事例。ベテランの技能を学習したAIが品質を判定
「ものづくり人材」の育成に、AIを活用している事例も紹介されました。有限会社中山鉄工所様では、高精度画像検査システム「WiseImaging」を活用し、ベテランの技能品質を学習したAIで、若手技術者の磨き作業の品質を判定しています。20~30代の若手社員が中心となり、「自分で学べる道具」として意欲的にAIを活用しはじめています。シーイーシーのソリューションが、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の人材育成や技術継承に役立っている一例です。
最後に
立石は「シーイーシーは、進化するデジタル技術を使いやすい形にして、現場で活躍する” ものづくり人材”を応援していきたいと思っています。今後も現場で使っていただけるサービスや商品を提供していきたいと思います」とセッションを結びました。具体的なソリューションや活用事例が豊富に紹介され、充実した1時間で、会場ではメモを取りながら熱心に聞く人の姿が多く見られました。
シーイーシーは、最先端のテクノロジーに基づいた豊富なソリューションで、ものづくり企業を支援します。ご興味をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
関連サービス
■作業計測・分析システム「SmartLogger(スマートロガー)」
■位置情報管理・動線分析ソフトウェア「RaFLOW(ラフロウ)」
■工場IoTデータ可視化サービス「Visual Factory(ビジュアルファクトリー)」
■ウェアラブル型作業者支援システム「SmartFollow(スマートフォロー)」
■スマートデバイス/作業者支援システム「EdaGlass(エダグラス)」