【セミナーレポート】5分でよめる「製造業のAWS内製化はどう実現する?〜失敗事例から学ぶ、内製化実現の最適解~」
2024年1月30日に、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の協力のもと、「製造業のAWS内製化はどう実現する?〜失敗事例から学ぶ、内製化実現の最適解とは〜」というセミナーを開催しました。
本セミナーは、約150名の方にお申し込みいただき、満足度の大変高いセミナーとなりました。
本記事では、その内容をレポートいたします。
登壇者
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニアパートナーソリューションアーキテクト
髙橋 達矢 氏
株式会社シーイーシー
営業本部 首都圏営業部
上野 慧
AWSが解説。日本におけるDXの取り組み状況
まず初めに、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社から「内製化を進めるにあたって押さえておくべきポイント」についての解説がありました。
日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み状況については、一定の成果を上げている企業もあれば、まだまだ課題を抱える企業も多いのが現状です。
特に、アナログや物理データのデジタル化、業務の効率化による生産性向上といった取り組みでは、成果を実感している企業が80%に上ります。
しかし、新しい製品やサービスの創出、ビジネスモデルの変革など、本格的なDXの進展は20%程度という企業が多く、大きな開きが見られます。
このような状況は、デジタライゼーションといった、既存のものをデジタル化する取り組みには進展が見られるものの、ビジネスの本質的な変革につながるデジタルトランスフォーメーションは、まだまだ進んでいないことを示しています。
日本では、DXをさらに推進していくための取り組みが必要であると言えるでしょう。
また、デジタルトランスフォーメーションを進めるためには、体制の整備が重要です。
経済産業省の「DXレポート2.1」によると、DXを進めるための体制整備には、内製化も含まれています。
つまり、内製化はデジタルトランスフォーメーションを進めるための一つの手段として考えられるのです。
企業がDXを成功させるためには、内製化を含む体制の整備が不可欠であることを認識し、積極的に取り組む必要があるでしょう。
製造業がAWS内製化を推進するためのポイントは?
AWS内製化を推進するためには、いくつかのポイントがあります。
まず、デジタルトランスフォーメーションと内製化を進める上で、ITの変革を実現するための新しい原則を理解することが重要です。特に、「カルチャーとDevOpsモデルを育む」ことと、「自分で構築して所有する」ことが重要なポイントとなります。
変革的なITを実現するためには、以下の4つの要素が必要です。
- 迅速に実験する
- 先進的な機能を誰もが利用できるようにする
- 最も重要なことにフォーカスできるようにする
- アイデアを素早く小さいものから始めてどんどん大きくする、スケールさせること
迅速に実験するためには、市場調査や収益計画に多大な時間をかける従来の方法ではなく、お客様にどのような価値を提供できるかに焦点を当て、仮説の構築と検証を反復して行うことが重要です。
また、投資の観点からは、例えば新しいシステムやサービスを開発する際に、最初から大きな投資をするのではなく、小規模な実験やテスト(仮説の構築と検証)に必要なコストだけをかけることで、全体の開発コストを抑えるという考え方が重要です。
つまり、大規模な投資を行う前に、小さなステップでアイデアをテストし、その結果にもとづいて次のステップに進むことで、無駄な投資を避け、効率的にプロジェクトを進めることができるということです。
ビジネス環境が予測できない中で、企画立案からものづくり、リリースまでのプロセスを短いサイクルで繰り返し、お客様のフィードバックをもとに改善していくアプローチを採用することで、小さく始めて徐々にスケールアップすることが可能となります。
AWSでは、ビジネスの企画立案と開発上流工程においてユーザー企業がオーナーシップを持ち、開発と運用は専門家と連携する「BizDevOps」モデルを推奨しています。これにより、内製化を推進しながらも、スキルの足りない部分をパートナーとともに補い、ビジネス目標を共有しながら取り組むことができます。
ユーザー企業の内製化のパターンはさまざまですが、完全内製化から部分内製化、共創に至るまで、パートナーとの連携が現実的な選択肢となることが多いです。また、内製化したい範囲に応じて、基幹システムはパートナーと連携し、アジリティが求められるサービス開発などは内製化するという選択も考えられます。
日本におけるITエンジニアの配置状況を考えると、多くのエンジニアがIT企業に在籍しており、ユーザー企業側にエンジニアが少ないという状況があります。
そのため、IT技術を使って新しいプロダクトやサービスを開発する場合、自社だけでは難しく、パートナーと連携して取り組むことが現実的な選択肢となります。
しかし内製化に取り組むものの、失敗に終わるケースもあります。次のセクションでは、製造業におけるAWS内製化の失敗事例について解説します。
製造業におけるAWS内製化の失敗事例
続いて株式会社シーイーシー(以下 当社)よりから「製造業におけるAWS内製化の事例」について解説。
ここでは、AWS内製化における製造業の失敗事例と成功事例から、その理由を深堀します。
事例1:プラント企画・設計会社の失敗事例
製鉄・環境・エネルギー関連のプラント企画・設計会社では、AWSの利用要望に応えるために内製化を進めましたが、組織面でのリソースやノウハウが不足していたため、業務部門から対応の遅さが指摘されていました。
クラウド専業ベンダーによるインフラ構築の支援はあったものの、その後の活用やアプリケーション領域の支援が不足していたことが課題となりました。
結果として、業務部門が独自で活動するようになり、DX推進部門での統制が取れなくなりました。
- インフラ領域だけでなく、アプリケーション領域もワンストップで対応可能
- 業務部門からは様々な依頼があるため、ビックデータ、IoT、マイグレーションなど幅広いテーマに対応可能
- 要件定義~運用保守のサイクルをアジャイルで回すことが出来る
- CoEの組織支援を行いながら、新しいことに伴走できる体制が整っている
- これらを実施しながら、社内にAWSノウハウを蓄積していけるように支援して貰える
事例2:精密機器部品メーカーの失敗からの成功事例
精密機器部品メーカーでは、AWS上に工程管理システムを構築するプロジェクトが失速しました。
断片的なAWSサービス知識と、ベンダーとのコミュニケーション不足が原因でした。問題を抱えた状態でのアーキテクチャ構築や、内製化に向けたコミュニケーションの懸念が挙げられました。
この事例から、内製化を進めるにあたり、体系的な知識の習得と、ベンダーや関係部門との円滑なコミュニケーションが不可欠であることがわかります。
当社はこのプロジェクトに参画し、AWSのプロフェッショナルレベルのメンバーを配置して現状のアーキテクチャのレビューを実施。その結果、本番運用に耐え得る非機能が実装されていないことや、デリバリー化の安定化・高速化に必要な機能・環境が不足していることが明らかになりました。
これらの課題に対処するため、AWSアカウントの分割、マルチAZへの変更、CloudWatch Logsを使用したログ監視・通知機能の実装などを行いました。また、リリース作業の自動化のためにCI/CDの構築とInfrastructure as Codeの導入をサポートしました。
また、プロジェクト進行中の、週に1度のミーティングでは当社のコアメンバーが必須で同席し、AWSに関する質問に随時回答しながら、お客様がAWS利用を自走できるように支援しました。この取り組みにより、プロジェクトは成功に導かれました。
- 製造業のICT知見だけでなく、AWSノウハウを保有していること
- AWSアーキテクチャをコンサルティング出来ること(AWS認定プロフェッショナルレベル)
- 内製化の意向があるため、同社のAWSノウハウを蓄積していけるように支援して貰えること
事例3:ヤマハファインテック社 様の事例
ヤマハファインテック社では、データ収集基盤としてAWSの構築を検討していましたが、AWSの実績がなく、設計・構築・運用というノウハウが不足していました。
社内にノウハウを蓄積するために内製化支援の体制を整える必要がありました。当社は複数のアーキテクチャ案を提示し、最適な案を選定するサポートを行いました。
また、AWSの設定・運用方法について説明し、お客様自身で基本的な操作が確認できるように支援しました。
さらに、AWSに関する頻繁なアップデートに対応できるように、ポリシー更新などの方法もお客様自身で行えるようにレクチャーしました。これらのサポートにより、ヤマハファインテック社はAWSを自走して運用できる体制を確立しました。
これらの事例から、製造業におけるAWS内製化を成功させるためには、組織全体でのリソースとノウハウの確保、体系的な知識の習得、そしてコミュニケーションの強化が重要であることがわかります。
内製化における失敗を乗り越え、成功へと導くためには、これらのポイントを十分に考慮する必要があります。
シーイーシーが提供する、製造業向けAWS内製化支援サービスとは
当社は、製造業のお客様がAWSを活用して内製化を進めるためのサポートを行っています。
特に、BizDevOps伴走支援サービスを通じて、お客様のDX推進をサポートしています。このサービスは、当社が持つ豊富なノウハウを活かし、ビジネス領域からシステムの開発・運用まで、お客様が自身で推進できるように支援するものです。
具体的には、ビジネス領域では現状の技術課題の洗い出しとアーキテクチャの支援を行い、DevOps領域では環境構築、運用、CI/CD整備、リセール、セキュリティなどをサポートしています。
また、お客様の業務内容に応じたテンプレートを用意しており、音声支援や生成系AI、データ分析など、さまざまなユースケースに対応しています。
例えば、音声のテンプレートでは、配達員の業務品質を向上させるために音声支援を活用し、ハンズフリー化を実現しています。
また、生成系AIのテンプレートでは、製品アップデートごとにマニュアルを効率的に作成するために、校正と翻訳をAIで行うことで時間とコストを削減しています。
当社は、AWSに対する豊富なノウハウと経験をベースにユーザー企業の内製化を推進できる、「内製化支援推進AWSパートナー」に認定されています。「DX推進を加速させたい」「内製化をしていきたい」という方は、ぜひご相談ください。
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