テレワーク導入を成功させるためのコツ-「テレワークセキュリティガイドライン」を読み解く-
テレワークの導入を成功させるためのコツ
時間や場所を有効に活用できるテレワークは、働き方改革を実現する施策の一つとして注目されています。本コラムでは、3回にわたりテレワークを成功させるコツや、テレワークセキュリティガイドラインのポイントを、事例をまじえながらご紹介します。安心してテレワークを導入する方法について理解を深めていただければ幸いです。
テレワーク導入・導入予定企業は着実に増加している
テレワークは、政府が進める働き方改革において重要な施策の一つに位置づけられています。政府は「2020年には、テレワーク導入企業を2012年度(11.5%)比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者の10%以上」にすることを目指しています(「世界最先端IT国家創造宣言」2013年閣議決定)。このような背景もあり、テレワークを導入する企業は年々増加しており、総務省「平成29年通信利用動向調査」によれば、2017年にテレワークを導入している、または導入予定の企業は18.2%となっていました。
テレワークが実現するのは、「人生の喜びを犠牲にしない働き方」
テレワークが求められる背景として、柔軟な働き方の実現、ワークライフバランスの確保、長間労働の是正、生産性向上、非常時の事業継続性の確保などが挙げられます。20年以上もテレワークを主体とした事業を行い、国内外約300名のテレワーカーを抱える株式会社グリーゼの代表取締役社長 江島民子氏は、「子育てや介護、病気など、仕事をする意欲があっても、制約のある人材の時間を有効に活用できることが、テレワークの一番の成果」だと言います。「テレワークは、人生の喜びを犠牲にしない働き方であり、時間や場所にとらわれずに個人のパフォーマンスを効率的に最大化できます。今後、テレワークを主体とした柔軟な働き方が当たり前の時代がやってくると感じています。」
またテレワークは、近年深刻化する人材不足を解決する方法の一つとしても有力視されています。テレワークを積極的に導入することによって、地方在住の人材、家庭や健康上の事情などによりフルタイム勤務できない人材を登用できるからです。また、テレワーク導入を進めることにより、「働きやすい会社」「社員を大切にする会社」として企業ブランドや企業イメージの向上が図れるため、社員採用においても大きなアピールになります。
テレワークに向いている業務、人材を見極める
テレワークを導入する際には、対象者、対象業務、実施頻度を決定する必要があります。多くの企業では、資料の作成・修正・管理、上司や同僚、顧客先や取引先との連絡・調整、社内手続などがテレワークで実施されています(厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革~テレワークの導入・運用ハンドブック」)。テレワークに適した業務を洗い出したのち、実施しやすいものからテレワークの頻度を増やし、徐々に業務範囲を広げていくことがおすすめです。
どの業務をテレワークで行うか、という問題以上に大切なのが、「対象者の適性の見極め」だと前述の江島氏は言います。「テレワーク導入済みの各企業のトップとも意見が一致する点なのですが、誰もがテレワークによって最大の力が発揮できるかと言うとそうではないと感じます。自己管理ができる人、自主性や計画性がある人、誰も見ていなくても集中できる人でないと、テレワークは成功しません。適性がないスタッフを無理にテレワークさせる必要はなく、適材適所で人材を適用すべきです」。テレワークを試行して、個々のスタッフがテレワークで力を発揮できるかどうかをジャッジする必要があるでしょう。
テレワークセキュリティガイドラインとは
テレワーク導入においてまず課題となるのは、セキュリティ対策をどう行うかという点です。2004年に総務省が策定した「テレワークセキュリティガイドライン」は、企業などが安心してテレワークを導入・活用するためのセキュリティ指針をまとめたものです。2018年4月に公開された第4版では、IT環境の変化に対応するため、私用端末利用(BYOD)やクラウド、無線LAN、SNSなどの利用を想定した内容が追加されました。
テレワークセキュリティガイドラインには、テレワークを安心して導入するための指針が体系的に示されています。企業や自治体などにとっては、セキュリティポリシーを策定する際に必要な項目をピックアップして活用することができ、大いに役立つ内容になっています。
>テレワークセキュリティガイドライン第4版 総務省 別紙3
テレワークを安全に運用していくために
さまざまなメリットのあるテレワーク制度ですが、セキュリティ面で不安があり、本格的にテレワークが導入できていないという企業や自治体も少なくありません。テレワーク業務で実際にあったヒヤリ・ハット事例を参照しながら、セキュリティ対策について考えていくことも大切です。