導入が進むAVD。目的別・業界別の導入事例を紹介
リモートワークに適した環境がなく、セキュリティに強いクラウドへの移行を検討されている企業は多いのではないでしょうか。今回は、AVD導入に関する導入事例を取り上げて、AVDのメリットや機能を紹介します。事業内容や企業規模によって必要なVDI環境は異なりますし、既存のネットワーク環境からスムーズに移行できるかどうかも重要です。さまざまな導入事例を参考にすることで、自社への導入イメージを描いてみてください。
なお、AVDの仕組みや導入のメリットなどはこちらでも解説しています。
AVDが活用されるシーンとは
AVDの選定理由や用途について見てみましょう。自社のニーズに当てはまるようであれば、ぜひ本格的に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
(1)高いセキュリティが求められるリモートワーク環境
AVDはゼロトラストの考え方に基づくセキュリティ環境とともに利用できる仮想デスクトップサービスです。仮想デスクトップでの作業を画面転送のみで行うため、実際のデータのやり取りがありません。端末にデータが残らないので、セキュリティ面において大きなメリットがあるサービスといえるでしょう。
(2)高い処理能力が必要な業務
Microsoft社のパブリッククラウド「Microsoft Azure」に仮想マシンとデータを置いて、仮想デスクトップ上で作業するのがAVDの仕組みです。仮想マシンの処理能力やスペック、ストレージなどはユーザーが自由に設定できるため、設計や開発、画像処理といった高い処理能力が求められる業務にも適しています。
例えば、建設業界で進んでいる「建設DX」では、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)ソフトや3D CADを使った作業のために導入するなど、新たなニーズに対応する形でAVDの普及が進んでいます。今後は、AIによる画像の識別や動画編集・加工などにも、AVDが活用される傾向が高まっていくかもしれません。
(3)マルチセッション接続で1台の仮想マシンを同時に利用できる
「Windows 10 Multi Session」によって、1台の仮想マシンを複数のユーザーで同時に利用できます。たとえば、8vCPUの仮想マシンを1コアに対して4人で使用する場合、32人の利用が可能です。同時に利用できる人数は、「vCPUあたりの推奨最大ユーザー数」により変わります。ストレスなく利用できる人数については、事前に問い合わせるなど確認することをおすすめします。
また、Microsoft 365などの既存の業務系アプリケーションも自由に使えるため、PC環境の変化に伴う生産性の一時的な低下はなく、スムーズな導入が見込めます。
AVDのマルチセッション接続の詳細は、こちらで解説しています。
AVDの活用例(目的別)
AVDの機能に注目して、目的別の活用事例を取り上げてみました。
(1)生産性の向上
セキュリティの強化によってリモートワークの推進が図れると同時に、Microsoft TeamsやMicrosoft SharePointを採用することで、社内コミュニケーションの活性化、生産性の向上も実現できる利点があります。AVDはMicrosoft製品との親和性が非常に高く、Microsoft 365の機能をそのまま活用できたり、追加でライセンスを購入することなく利用できたり、運用面でのメリットも多いサービスになっています。
(2)個人情報保護
AVDではインターネットの分離環境を構築できるため、顧客の個人情報や社内の重要情報の保護にも有効です。業務で用いる端末とネット利用のための端末を物理的・論理的に分離できるため、フィッシングメールなどの標的型攻撃への根本的な対応が可能となります。サイバー攻撃は今後もさらに高度化していくことが予想される昨今、機密情報流出防止にもAVDは有効であるといえるでしょう。
(3)低コストでの導入
Microsoft 365 E3のライセンスがあれば、追加のライセンス料が不要になるなど、コスト面でのメリットを感じて導入する企業は少なくありません。管理サーバーや仮想化基盤も必要なく、初期の立ち上げが早い点もメリットの1つです。
AVDの活用事例
リモートワークの導入に伴い、オフィスの省スペース化やフリーアドレス化を図りたい場合にも、AVDは大変有効な手段となります。ここでは、ある企業のAVD導入事例を紹介します。
ホストPCを必要としないAVDの利点
VDIサービスの中には、PCの画面のみを転送する方式のサービスがあります。社内にホストPCを置いておき、リモートワーク中の社員が利用する方法ですが、画面転送はネットワークへの負荷が大きく、トラフィックが混み合うと社内全体のパフォーマンス低下につながるリスクがあります。
一方AVDの場合は、Microsoft Azure上にある仮想マシンに各自宅のインターネットから直接リモート操作するため、社内ネットワークの影響をほぼ受けません。どこからでもPCさえあればアクセス可能な仕組みです。もちろん、社内にホストPCを用意する必要もありませんから、自由度の高い環境を構築できる利点があります。
情報システム部門の業務を軽減
社内サーバーを利用してVDIを使用する場合、サーバーの管理や運用にかかる負担を計算に入れる必要があります。また、PCの入れ替えがあるたびに、新たにアプリをインストールしたり、メールなど各種設定をしたりする必要があり、情報システム部門への負担が大きくなります。
これに対してAVDであれば、サーバー管理やPCの設定といった業務工数の大幅な削減が可能です。必要なソフトやアプリは個々の端末のマスターとなる仮想マシンにインストールします。マスターをイメージ化し、作成したイメージをもとにそれぞれの端末を作成するため、個々の端末へのインストール作業が不要になります。クラウド上から各端末の起動や停止といったメンテナンスや設定変更が簡単にでき、ADのGPO(グループポリシーオブジェクト)でも細かい制御ができる点もメリットです。
マルチセッション接続が可能なAVDであれば、ハイスペックな仮想マシンをいつでも・誰でも・どこからでも利用することができます。
※AVDの導入によって、オフィスの省スペース化・フリーアドレス化と併せて、情報システム担当者の業務負担を大幅に軽減した事例があります。下記事例もぜひご覧ください。
AVDの導入を検討すべきタイミングとポイント
どのタイミングでAVD導入を検討すべきか、3つの事例を取り上げて説明します。ぜひ参考にしてみてください。
(1)サーバーの保守期限が迫っているタイミング
データセンターサーバーの更新時期や保守契約の期限が迫っている状況は、オンプレミスのシステムからクラウドへの移行を検討する絶好のタイミングです。また、Windows Server OSのサポートが終了するタイミングでの移行もメリットが大きいといえるでしょう。
(2)VPN、ネットワーク障害が顕著化したタイミング
ワークステーションにVPN経由で接続している場合などで、急速なテレワーク推進により発生するVPNやネットワークの遅延・障害に対応するタイミングもAVD導入の検討に適しています。AVDは、使った分だけの従量課金制であるため、まずは小さな規模での導入や、部分的にスタートさせるなど、柔軟に立ち上げられるため相性がよいといえます。
(3)ワークステーション用PCの配備不足が起こったタイミング
ワークステーション単体での運用に限界を感じていたり、世界的な半導体不足によりPCの供給に時間がかかったりする場合も、クラウドサービスの利用を検討するタイミングの1つです。数週間単位で必要な分だけのVDI環境を構築でき、しかもスピーディな立ち上げが可能なため、導入までにかかる時間を比較して最適な選択ができるでしょう。
AVDの構築から運用の流れについてはこちらで解説しています。
まとめ
「機密情報流出防止」「リモートエンジニアリング」「短期間でのリモートワーク環境の構築」など、AVDの導入によって課題を解決した事例が豊富にあります。ここで紹介した事例以外にも、さまざまなAVDの活用方法がありますので、AVD導入サービスを手掛ける専門会社に相談してみてください。
また、AVDを導入しようと思っても、プラン選択や環境構築、運用など、どこから始めて良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。シーイーシーでは、1回につき1社限定の個別相談会を開催しています。ぜひご利用ください。