社員参加型イベントで自律型BPRを前進させた伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様の事例
社員参加型イベント「MISI BPR Cup 2022(以下 BPR Cup)」を開催し、自律型BPRを前進させた伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社(略称:MISI)様。BPR Cupが目指す先は、取引先も巻き込んだワンチーム!本コラムでは、BPR Cupの企画に至った背景と経緯、効果などについてご紹介します。
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今回インタビューに答えていただいた伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社の皆様
経営戦略・人総本部 人事総務部
人事企画チーム長(兼)
人材開発チーム長
山林 泰規氏
IT推進部
ITソリューションチーム長代行
宮﨑 良太氏
デジタル戦略室
山口 瞳氏
デジタル戦略室
菅谷 賢吾氏
残業時間が増加していないのはBPRを推進した部門
第7次中期経営計画(2021年度-2023年度)で掲げた「備える~収益基盤再強化」「高める~競争優位性構築」「鍛える~人的資源底上げ」の3つの重点施策を推進するため、BPRに取り組んでいた伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様。そこにコロナ禍のリモートワークと鉄鋼市況の急騰が重なって業務が繁忙となり、さらなるBPRへの取り組みに迫られていました。
全社的に業務が忙しくなる中、一部の部門に限っては残業時間の抑制ができていたようですが、なぜでしょうか?
2021年の年末、残業時間の解析を行ったところ、すでにBPRを推進しRPAなどを取り入れている部門は、業務量が増加しているにも関わらず、パフォーマンスは向上し、残業時間は増加していませんでした。
BPRが進んでいない部門はいかがでしたか?
BPRが進んでいない部門は残業時間が増加傾向で、パフォーマンスに影響が出ていることが分かりました。今後、さらに残業時間が増加して業務が回らなくなる状況を回避するためにも、全社的なBPRへの取り組みが必要でした。
研修だけではBPRにたどり着けない
結果的に見ると、BPRに取り組んでいる部門は少数にすぎず、大部分はBPRには手つかずの状況だったようですが、詳しくお聞かせいただけますか?
どうしても現場の意識は、研修よりも本業が頭の中心にあります。そのため、デジタルリテラシー研修を通じてRPAツールなどを紹介しても、受け身姿勢から脱却が難しい。我々からの一方通行の研修では、BPRの必要性が伝わっていないと感じていました。
正面からBPRに取り組むと、デジタルリテラシーを向上させる長いトレーニング研修がメインになってしまい、本来の目的であるBPRになかなかたどり着けないという懸念がありました。
競争を促す社員参加型イベントで自律型BPRを目指す
なるほど。過去の研修の実施経験や、懸念点などから、どのような作戦を立てたのでしょうか?
BPRを推進するには、“自分たちの業務を自分たちで改革したという成功体験”が得られる研修プログラムでなければならないと、結論付けました。そこで企画したのが、全社的なイベントBPR Cupです。
“全社的に競う”という要素が加わると、俄然やる気を発揮するのが当社の社風です。過去のスポーツイベントやペーパーレス化の取り組みをイベント化した『ペパリンピック』で、それは実証されています。
BPR Cupの概要
BPR Cupは営業5本部、職能2本部、国内4社が参加しました。2022年7月~9月の上期11チーム、2022年12月~2023年2月の下期8チームに分けて計2回開催。チームごとにBPRの成果が分かるプレゼン動画を作成してもらい、それを社内ポータルに投稿する形式で社員全員が閲覧できるようにしました。より素晴らしいBPRの取り組みを発表したチームには総合優勝・技術賞・CDO賞の授与や、記念品の贈呈を加えたこともあり、BPR Cupは大いに盛り上がりました。また、以下を開催概要に盛り込んだことも、BPR Cupの成功につながったようです。
課長・課員のチーム制
課員だけがBPRに取り組むのではなく、上長が未来図を描き、組織が一丸となって時間を創出しようとするムーブメントが大事だと考え、BPR Cupはチーム制で開催。
BPR Cupの結果はいかがでしたか?
上長のコミットメントが強い部門ほどアウトプットにつながるという仮説のもと、ボトムアップとトップダウンが融合する設計にしました。実際に、課長はもちろん、部長代行や部長といった上席が参加したチームは、ダイナミックに組織全体でBPRに取り組む傾向が見られました。
自律型BPRを支援するノーコード開発ツールの選定
BPRを実行するうえで欠かせないツールは、内製できるツールや、ノーコード開発ツールを中心に選定しました。
効率化や自動化ができる業務を洗い出しても、内製が困難だとベンダー任せになります。そうなると自律型BPRへの取り組む意識が希薄になり、BPR Cupの意義が失われてしまいます。そこで我々が、自律型BPRの内製に適したツールを中心に数種類のツールを選定して、どのツールを利用するかは、各講師や事務局と相談して、課題に合わせて、複数のツールを組み合わせる等、最適なツールを選べるようにしました。
トレーニング型研修と個別サポート体制
ツールを用い、課題解決のためのスキルを習得するトレーニング型研修に加え、個別サポートの相談窓口を設置。継続的に自律型BPRを支援する体制を構築しました。
研修を受けると、なんとなくできた感じになりますが、実際には身についていないケースが少なくありません。そこで今回は、BPR Cup後も継続的に相談・支援を受けられる個別サポートを設けました。
BPRの取り組みを合計すると数千時間の削減効果
チームによっては複数案件のプレゼン動画を作成するなど、真剣にBPRに取り組む姿は想像以上。しかも、各チームが発表したBPRの取り組みを合計すると、数千時間の削減効果を期待できる試算が出ました。
各チームの発表の内容を教えていただけますか?
もっとも多かったプレゼン動画は、基幹システムにある予実管理のためのデータをダウンロードし、Power Queryでデータを整形後、Power BIでグラフ化するというもの。Power BIのスライサー機能を使い、特定の抽出条件を表示する仕組みを発表したチームもありました。
チームの発表を聞いて、どのように感じられましたか?
BPRすべき業務の可視化、BPRに適したツールの選定、ローコード開発ツールによる業務効率化の仕組みづくりの各フェーズを通じ、自律型BPRのベースが参加社員以外にも浸透し始めていることも、BPR Cupの大きな成果だと考えています。
他部門や取引先まで含めたワンチームをコンセプトに
同社はBPR Cupをこれからも続けていく予定です。
2022年は自分たちの部門の業務改革を中心に取り組んできましたので、今後は部門同士が連携してBPRを推進していく横展開も考えていきたいですね。さらに、取引先までつながっていき、業務がスムーズに連携するようになればBPR Cupは大成功と言えるでしょう。そういう意味では“取引先を含めたワンチーム”が、今後のBPR Cupのコンセプトになると思います。
シーイーシーはMicrosoft Power Automateの個別サポートを支援
シーイーシーはローコード開発のRPAツール、Microsoft Power Automateのトレーニング型研修と個別サポートを担うベンダーとして、同社のBPR Cupを支援しました。とくに、個々の取り組みに伴走するシーイーシーの個別サポートは、大人気とのこと。また、「いつでも教えてもらえる個別サポートの体制は今後も欠かせない」と、BPR Cup終了後も個別サポートを継続しています。この「Power Automateの活用事例」に関してはこちらをご覧ください。
現在、企業はもちろん、政府機関や自治体などもBPRに取り組む動きが活発化しています。ただ、BPRを急ぐあまり、現場のリテラシーが追いつかないままツールの導入が先行してしまい、なかなかBPRにたどり着かないケースもあります。伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様のように、まずは自律型BPRを掲げ、BPR Cupという社員参加型イベントを通じて推進していくのは、BPRを進めるうえでの大きなヒントになるかもしれません。ご参考にしていただけると幸いです。
Power Platformについてはこちらの記事で紹介しています。
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