BPRとは?BPMとの違いや失敗しない進め方について
ビジネスプロセスとは、企業が顧客に価値を提供するために行う一連の活動のことです。
例えば、商品の開発、製造、販売、アフターサービスなどがビジネスプロセスにあたります。
ビジネスプロセスは、企業の業績や競争力に大きな影響を与える重要な要素ですが、時代や環境の変化に合わせて適切に改善されているでしょうか?
ビジネスの環境や競争が激化する中、企業はより効果的な経営を求められています。
この記事では、ビジネスプロセスの根本的な見直しと改革を目指す「BPR」という手法について解説します。
また、BPRとは何か、BPMとの違いは何か、BPRを成功させるために必要なことや活用事例などを紹介します。
BPRとは
BPRとは、ビジネスプロセスリエンジニアリング(Business Process Reengineering)の略語で、ビジネスプロセスを根本的に再設計することで、業務の効率化や品質の向上、顧客満足度の向上などを目指す手法で、1990年代にハーバード大学のマイケル・ハマー教授とジェームス・チャンピー博士によって提唱されました。
BPRでは、ビジネスプロセスを構成する各業務やタスクを分析し、必要なものだけを残し、不要なものは削除することで、プロセスをシンプルにします。また、プロセスの横断的な視点から、組織の壁や階層を取り除き、業務の流れをスムーズにします。
さらに、プロセスの目的や成果に注目し、顧客のニーズや期待に応えることを重視します。
BPRは、従来の改善や改良ではなく、革新や創造を目指す手法です。
BPRがなぜ注目されているか
BPRは、1990年代に流行した手法ですが、なぜ今もなお注目されているのでしょうか?その理由は、以下のような社会的な背景にあります。
少子高齢化の進行による深刻な人手不足
日本の人口は高齢化と少子化の進行により、減少傾向にあります。この結果、労働力人口も減少し、さまざまな産業で人手不足が深刻な問題となっています。経済産業省の推計では、2030年には約650万人の人手不足が発生すると見込まれています。
人手不足は、企業の生産性や競争力に悪影響を及ぼし、経済成長にもブレーキをかける可能性があります。
人手不足に対応するためには、単に人を増やすだけではなく、人の働き方や仕事のやり方を見直すことが必要です。無駄な作業や手間を省き、効率的に業務を遂行することで、人材の有効活用を図ることができます。そのためには、ビジネスプロセスの改革が欠かせません。
BPRは企業のビジネスプロセスを再設計するための効果的な手法です。
企業のDX推進の一環としての「BPR」
デジタル技術を導入するだけではDXは推進できません。デジタル技術を有効に使うためには、ビジネスや組織のあり方を変える必要があります。たとえば、AIやビッグデータを使うなら、データをどう集めて、どう分析して、どう活かすかという流れを作らなければなりません。
また、クラウドやブロックチェーン活用するなら、セキュリティやコンプライアンスのルールを確立する必要があります。
BPRは、デジタル技術を活用するためのビジネスプロセスの見直しに有効といえるでしょう
ビジネスプロセスを根本的に再設計することで、業務の効率化や品質の向上、顧客満足度の向上などを目指します。
BPRとBPMの違い
BPRとBPM(ビジネスプロセスマネジメント)は、どちらもビジネスプロセスに関する手法ですが、その目的やアプローチに違いがあります。BPRは、ビジネスプロセスを根本的に再設計することで、大幅な業績向上や変革を目指す手法です。そして、ビジネスプロセスを継続的にモニタリングや評価し、小さな改善や改良を繰り返すことで、持続的な業績向上や最適化を目指す手法です。
BPRとBPMの違いは、以下のようにまとめることができます。
BPR | BPM | |
目的 | ビジネスプロセスを一度に大きく変えることで、飛躍的な成果を得る | ビジネスプロセスを少しずつ変えることで、着実な成果を得る |
重点 | ビジネスプロセスの再設計 | ビジネスプロセスの管理 |
リスクやコスト | 高い | 低い |
効果 | 大きい | 小さい |
BPRとBPMは、相反する手法ではなく、お互いを補完する手法です。
BPRでビジネスプロセスを再設計した後に、BPMでビジネスプロセスを管理することで、より効果的なビジネスプロセスの改革ができます。
BPRの目的
生産性の向上
BPRの目的の一つは、生産性を向上することです。生産性とは、投入した資源に対する出力の割合のことで、生産性が高いほど、同じ資源でより多くの成果を得ることができます。
BPRでは、ビジネスプロセスをシンプルにし、業務の流れをスムーズにすることで、無駄な作業や手間を省き、効率的に業務を遂行することができます。また、デジタル技術を活用することで、人の代わりに機械が業務を行うことができます。これにより、人の負担を軽減し、人の能力を最大限に発揮することも可能です。
BPRを行う事で、生産性を向上し、企業の競争力や収益性を高めることができます。
コスト削減
また、BPRの別の目的は、コストを削減することです。業務プロセスの効率化や自動化によって、コストを削減します。例えば、人件費や材料費、設備費などの固定費や変動費を減らすことで、利益率を高めたり、在庫や廃棄物などの非付加価値の要素を減らすことで、資金繰りやキャッシュフローを改善します。
競争力の強化
さらに、BPRの別の目的は、競争力の強化です。競争力とは、他の企業や組織と比較して優位に立つことができる能力のことで、高いほど市場での成功の可能性が高まります。
BPRでは、業務の流れやルールを再設計することで、顧客のニーズや期待に応えることができるようになります。例えば、顧客の要望に応じてサービスをカスタマイズしたり、迅速に対応したり、付加価値の高いサービスを提供したりすることで、競争力を強化することができます。
BPRが進まない、失敗する要因とは
BPRは、ビジネスプロセスの改革に有効な手法ですが、実践する際には、さまざまな困難や障害に直面することがあります。BPRが進まない、失敗する要因として、以下のようなものが挙げられます。
ビジョンや目標が明確でない
BPRは、ビジネスプロセスの再設計によって、どのような成果を得たいのか、どのような変革を目指すのかを明確にする必要があります。ビジョンや目標が明確でないと、BPRの方向性や意義が分からず、プロジェクトの推進が困難になります。
トップマネジメントのコミットメントが不十分
ビジネスプロセスの根本的な再設計によって、組織の壁や階層を取り除くことを、BPRは目指します。トップマネジメントの強力なリーダーシップと決断力が必要です。
トップマネジメントのコミットメントが不十分だと、BPRの推進に必要なリソースや権限が得られず、プロジェクトの遂行が困難になります。
組織の抵抗や反発が強い
BPRは、ビジネスプロセスの根本的な再設計によって、従来の業務や慣習を大きく変えることを目指します。そのためには、組織のメンバーの理解と協力が必要です。
組織の抵抗や反発が強いと、BPRの受け入れや実施が困難になります。
分析や設計が不十分
BPRは、ビジネスプロセスの再設計によって、業務の効率化や品質の向上、顧客満足度の向上などを目指します。現状のビジネスプロセスの分析や問題点の特定、改善案の設計や評価などが不可欠です。
分析や設計が不十分だと、BPRの効果が低くなるか、逆効果になる可能性があります。
BPRを失敗しないために必要な手順
検討
BPRを行う前に、まずは現状のビジネスプロセスを検討します。
- 目的や成果物は何か
- 流れや役割分担はどうなっているか
- 関わるステークホルダーは誰か
- 関わるコストや時間はどのくらいか
- 関わる問題点や課題は何か
検討する際には、現場の声やデータを活用するとともに、顧客のニーズや市場の動向も考慮することが必要です。また、検討するビジネスプロセスの範囲やレベルを明確にすることも重要です。業務レベルだけでなく、部門レベルや企業レベルで行うこともありますが、それぞれに適した検討方法や目標設定が必要です。
分析
検討したビジネスプロセスを分析します。
- 効率や効果はどの程度か
- 無駄やムダはどこにあるか
- ボトルネックや障害は何か
- 改善の余地や可能性はどこにあるか
ビジネスプロセスを分析する際には、定量的な指標や基準を用いるとともに、定性的な評価やフィードバックも取り入れることが必要です。また、分析するビジネスプロセスを他の企業や業界のベストプラクティスと比較することも有効です。現状のビジネスプロセスを改善するだけでなく、イノベーションや差別化を目指すこともありますが、適切な分析方法や視点が必要です。
設計
分析したビジネスプロセスを改革するための新しいビジネスプロセスを設計します。
- 目的や成果物は何か
- 流れや役割分担はどうなるか
- 関わるステークホルダーは誰か
- わるコストや時間はどのくらいか
- 関わるリスクや課題は何か
ビジネスプロセスを設計する際には、分析した問題点や課題を解決するとともに、顧客の満足度や付加価値を高めることを目指すことが必要です。また、設計するビジネスプロセスを実現するために必要な組織の変革やITシステムの導入も考慮することも重要です。
実施
設計した新しいビジネスプロセスを実施します。実施するポイントは、以下のようなものです。
- 実施計画やスケジュールはどうなるか
- 実施に必要なリソースや予算はどのくらいか
- 実施に関わるコミュニケーションや教育はどう行うか
- 実施に関わる変更管理やリスク管理はどう行うか
ビジネスプロセスを実施する際には、設計したビジネスプロセスを忠実に実行するとともに、現場のフィードバックや改善提案も取り入れることが必要です。実施するビジネスプロセスに対する組織やステークホルダーの理解や支持も確保することも重要です。また、一度のプロジェクトで完結するだけでなく、継続的な改善や変革を行うことも考えましょう。
モニタリング・評価
実施した新しいビジネスプロセスの効果や成果をモニタリング・評価します。
評価するポイントは、以下のようなものです。
- 効果や成果はどの程度か
- 問題点や課題は何か
- 改善の余地や可能性はどこにあるか
- ベストプラクティスやノウハウは何か
モニタリング・評価する際には、定量的な指標や基準を用いるとともに、定性的な評価やフィードバックも取り入れることが必要です。また、モニタリング・評価するビジネスプロセスを他の企業や業界のベンチマークと比較することも有効です。
BPRの活用事例
BPRは、さまざまな業界や企業で活用されています。ここでは、BPRの成功事例の一つとして、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 様の事例を紹介します。
【伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 様 】RPA(Power Automate)を活用しBPRに取り組んだ事例
自律型BPRの推進と生産性向上を目指し、内製可能なローコードツール(Power Autmate)を選定し、シーイーシーの伴走支援を受けながら内製で実装。業務の見直し・自動化が実現し、年間数千時間の業務削減効果が期待される成果につながった。
- RPAの作成をベンダー任せにせず、業務自動化のロードマップを自社で描きたい。
- 内製できるRPAツールで、自律型BPR(Business Process Re-engineering)を推進したい。
- 内製化に向けて、画一的な研修だけではなく、フレキシブルに学べる研修環境を用意したい。
- ローコード開発ツールであるPower Automateの利用でRPAの内製化基盤をつくり、現場主導の開発スタイルを仕組み化。
- Power Automateの使い方をフォローアップするシーイーシーの個別サポートが、内製化を促進する役割を果たす。
- Power Automateによるさまざまな業務の自動化によって、年間数千時間の業務削減が視野に。
事例の詳細はこちらからダウンロードできます
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シーイーシーはMicrosoft Power Automateの個別サポートを支援いたします
BPRとBPMの関係性とメリットについて解説しました。ビジネスにおいて、業務プロセスを見直し、効率化や改善を図ることは重要です。そのためには、BPRとBPMという2つの手法を知っておくと便利です。
現在、企業はもちろん、政府機関や自治体などもBPRに取り組む動きが活発化しています。
シーイーシーはローコード開発のRPAツール、Microsoft Power Automateのトレーニング型研修と個別サポートを担うベンダーとして、きめ細やかなサポートを行っています。
もし企業のBPR推進に関してお困りごとがありましたらシーイーシーまでご相談ください。
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