営業プロセスを標準化するセールスイネーブルメントの考え方とツール【営業強化ノウハウ】
- 営業を採用したものの、独り立ちまでに時間がかかる
- 営業方法が属人的で、育成担当者次第で成果が変わる
- 誰がやっても一定の成果があがる仕組みが作れれば…
営業組織をマネジメントしていると、このような壁に直面することはありませんか?そこで重要になってくるのが、セールスイネーブルメントです。セールスイネーブルメントとは、継続的に成果をあげるために営業組織を強化・改善する取り組みです。
営業組織の強化において特に問題となるのは、営業ノウハウが属人的になりやすいこと。そこで今回は、誰でも一定の成果が出せるようになる営業育成・OJTの仕組み化の考え方と、それを実現するためのツールをご紹介します。
営業強化における課題とセールスイネーブルメント
コロナ禍により、営業のあり方も変わりました。例えば、「なかなか客先に訪問できない」「在宅からの営業活動を行う」など、コミュニケーションのとり方も変化しています。社内でも、新人営業の育成や営業担当者同士の情報共有が希薄になり、ノウハウが継承されづらい問題もあります。
特に、「営業活動が属人的で成果アップの糸口がつかめない」「OJT担当によって育成度合いが変わってくる」といった課題があり、組織としての営業強化がなかなかできない現状もあるようです。2020年以降に入社した方々は、在宅勤務でスタートした方も多く、対面での育成ができず苦労したという声をよく聞きます。
また、特にBtoBでは、売り手・買い手ともに関係者が増えて、チームワークが重要になってきました。売り手はインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどといった職種間の協業。買い手は、決裁するための意思決定者に納得度の高いプレゼンをすることなどです。
このような変化がある中で近年注目されているのが、セールスイネーブルメントの考え方。営業組織を強化・改善するための取り組みで、営業研修やツールの開発・導入、営業プロセスの管理・分析などを設計し、数値に基づいた分析で営業活動の最適化を目指します。セールスイネーブルメントの職種を専門で採用する企業もあるほど、注目されています。
このセールスイネーブルメントの考え方を導入することで、ブラックボックスになりがちな属人的な営業活動を標準化することができるようになります。セールスイネーブルメントの中でも、営業の育成、特にOJTによるスキル習得具合のバラつきや営業ノウハウの共有不足などに課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、営業組織の強化を目指した営業活動の標準化、育成・OJTの仕組み化までのステップを解説していきます。
セールスイネーブルメントまでのステップとITツール
営業組織の強化をするには、理想の営業プロセスを描き、プロセスがある程度自動で進むように仕組み化してしまうことがポイントです。普段営業活動で使っているITツールを駆使して、どのような営業プロセスをたどることが成果への近道か、描いていきましょう。
具体的な仕組み化のステップは主に以下の4つです。
- 属人化しやすい営業活動を標準化するための下準備
- 模範とする営業の行動を分析
- 成果が上がりそうな行動を一般化
- ツールの活用で行動促進を自動化
このステップをたどることで営業活動全体に対するPDCAサイクルを回すことにつながり、成果の再現性が高い科学的な営業活動ができるようになります。
以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
属人化しやすい営業活動を標準化するための下準備
営業活動を標準化するには、そのための土台となる下準備が必要です。どのような営業活動を標準化するべきか、データを元に最適解を見つけていきましょう。それには、例えば、SFA・CRMを導入しているのであれば、日々の営業活動のデータを蓄積する必要があります。
データを分析するには、情報を蓄積する必要があります。もしまだSFA・CRMが整っていない場合は、下記記事が参考になります。
また、SFA・CRMは営業メンバーに定着させ、情報を蓄積させなければなりません。現場に定着させる方法は下記記事をご覧ください。
蓄積された情報を元に、「入力→蓄積→分析→現場へ還元」というサイクルを回します。このサイクルを作ることで実際の営業活動に活きるデータを集め、営業活動を標準化するための下準備が整います。
なお、蓄積すべき情報は各業種・業態、営業プロセスによって変わってきますが、行動と成果の因果関係がわかるような設計をするとよいでしょう。
例えば普段、ベテランやトッププレーヤーは商談から受注までのプロセスにおいて、顧客接点の頻度や回数が多いことがわかっているのであれば、それが測れるような情報を。1回目の商談後の動きがカギになっていそうであればどんな行動を取っているのかがわかるような入力項目を設けるとよいです。
このような仮説の候補がない場合は、インタビューや営業活動への密着、同行などをするとよいでしょう。
模範とする営業の行動を分析
データが溜まってきたら、模範とする営業の行動を分析しましょう。分析を通して成果をあげられる再現性の高い行動を抽出します。
模範とする営業は、例えばベテランの営業やトッププレーヤーなどです。しかし、できるだけ「仲の良さ」で販売する方法は避けた方がよいでしょう。仲良くなることもとても重要なスキルの一つですが、「誰でも真似できる行動」にフォーカスを当てなければ、再現性は生まれません。
分析の際は、仮説を立てて検証していきましょう。簡易的ではありますが、例えば下記のようなイメージです。
- 提案内容が影響?→どのようなヒアリングや提案をしているか
- 提案内容がわかりやすい?→どのような提案資料を使っているか
- 顧客接点が的確?→初回接点から2回目、3回目、受注までに何をしているか
- 行動の感覚が的確?→どのような行動を何日間でしているか
このような仮説検証を、再現性が得られるまで繰り返します。ゴールは「誰でも一定以上の成果をあげられること」なので、真似しやすい定量面での分析をしましょう。
またこの仮説検証は1回行えばよいのではなく、データが蓄積されるたびに繰り返しましょう。マーケットは変化するので、それに合わせて標準的な行動も変化させていくためです。とはいえ、一気に全営業活動を変えるのもリスクがあるので、トライアル&エラーを繰り返して自社に合うプロセスを見つけていきましょう。
成果があがりそうな行動を一般化
次に、分析結果を元に、どのような営業活動をすれば成果が上がるかを検討し、一般化します。例えば、「初回接点から3日後に資料Aを送付する」「商談後、1営業日以内に見積書を出す」など、誰でもできる行動に落とし込みます。
また、次のアクションができるように「トリガー」となる行動を見つけておきます。上記の例で言えば、「初回接点」や「商談」がそれに該当します。トリガーとしてSFAに記録できるよう、カスタマイズをするとよいでしょう。
例えば、SFAの商談記録をする機能に、「初回接点」として活動を記録します。次のアクションが「3日後に資料Aを送付する」と明確になっているので、人によって行動が変わることはありません。上長は初回接点から3日以内に資料Aが送られているかどうかを気にすればよいのです。
もちろん状況によって臨機応変に行動を変える必要もありますが、こうした基本的な行動を定義しておけば、営業方法の属人化や育成担当者の力量による教えることのバラつきなどは起こりづらくなります。
ツールの活用で行動促進を自動化
ここまでをツールに置き換えて、OJTや育成、営業行動マネジメントも自動化させてしまいましょう。上記の例で言えば、「初回接点」がSFAに記録された3日後に、「資料Aを送る」という通知をSFAから自動で飛ぶような仕組みにします。
例えばMicrosoftのDynamics 365(Sales)を利用しているのであれば、Teamsを連携させることが可能。Dynamics 365上で記録された営業活動を元に、「次は何をする」というアラートをTeams上に通知が出るようにします。
一部開発が必要ですが、このような考え方でスキームを組めば、一定の成果を出すための行動を定量的に促すことができるようになります。実際、Dynamics 365とTeamsを連携させることにより、営業活動の標準化、OJTの自動化に成功している事例もあります。
さらにAIと組み合わせることで、営業活動に最適な次の行動をアドバイスして、成果までの受注確度が高まる取り組みをしています。
「気合と根性と足で稼げ」という精神論や顧客にとって合わない提案、資料や事例を探すといった手間などをかけることなく、成果を高める再現性の高い営業活動を推進することが可能です。営業組織強化につながり、セールスイネーブルメントの実現となるでしょう。
まとめ:セールスイネーブルメントをITツールで促進
いかがでしたか?
営業を科学して、セールスイネーブルメントの中でも育成や営業プロセスの標準化を通して組織強化を実現するための考え方やツールの使い方を解説してきました。
とはいえ、最初のSFAを導入して情報を蓄積するフェーズでつまずいてしまうケースも少なくありません。特に、SFAを現場に定着させて情報を残す文化を醸成することは難易度が高いです。現場に定着させるためのヒントは下記記事で解説していますので、ご覧ください。
記事内の事例はこちらの資料に詳しくまとめておりますので、改めてご覧ください。
また、一気にいろいろと変えるのではなく、できることから始めて徐々に進化させ、できることを増やす方が早く成果に結びつくでしょう。そのため、記事内の例でいうと、TeamsとDynamics 365を連携してみるところから始めてみることもおすすめです。TeamsとDynamics 365の連携に関しては、こちらの動画が参考になります。
コロナ禍で営業のあり方や組織強化のあり方が問われている今だからこそ、できる進化の視野を広げていきましょう。