【Power Platform導入事例】請求書のデジタル化で紙文化から脱却|電子帳簿保存法にも対応した取り組み
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、アナログな業務フローをデジタルに置き換えて、効率化をしていきたいと考える企業はますます増えています。
特に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でリモートワークが進む中、出社しないとできなかった業務をデジタルに置き換える動きが加速。その上で、新たなツールを模索するケースも多いでしょう。中でも、ローコードツールやRPAなど、拡張性・柔軟性の高いツールを用いて業務フローを見直し、効率化に取り組んでいる企業も多く、コスト削減を実現しています。
本コラムでは、歴史ある鉄鋼業界において紙の文化から抜け出すきっかけをつかんだ、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社の取り組みを紹介します。同社は在宅勤務への切り替えを機に、ローコードツールであるMicrosoft Power Platformを導入。電子帳簿保存法にも対応した新たな業務フローを確立しました。
事例のさらなる詳細はこちらでも確認できます。
そもそもPower Platformとは?拡張性の高いローコードツール
Power Platformとは、現場社員でもソースコードを書くことなく、簡単なシステムを構築することができるローコードツールです。マイクロソフト社が提供しており、Microsoft 365やDynamics 365といった製品だけではなく、サードパーティが開発しているアプリケーションなどとも連携が可能。柔軟性と拡張性に優れています。
Power Apps、Power Automate、Power BI、Power Virtual Agentsの4つの製品があります。中でもPower Appsは業務用アプリケーションを簡単に作ることができます。また、Power AutomateはRPA機能も搭載しており、あらゆる業務を自動化することが可能です。
歴史ある業界の業務フローをPower Platformでデジタル化
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社は、総合商社の鉄鋼製品部門の「分社型共同新設分割」という形で2001年に誕生。鉄鋼製品などの輸出入や販売、関連事業を推進しています。
100年続く歴史の長い鉄鋼業界で、デジタル化の取り組みはあまり進んでいない企業も多い状況です。同社も紙文化やアナログな業務フローからなかなか抜け出せませんでした。
一方、働き方改革が進み業務の効率化が求められる中で、“昔から続く堅実な業務のやり方”を変える必要性も感じていました。特に請求書の明細は細かく、1回の取引で50枚以上の紙を使っていました。そのため、請求書の保管や回付に伴うコストや業務負荷が高く、ペーパーレス化が望まれていたのです。
2021年からは新たにCDO(最高デジタル責任者)を設置して、DX推進に本格的に取り組み始めました。
そのような中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で在宅勤務への切り替えを余儀なくされ、さらに業務負荷が増加。取引先の働く環境も大きく変化していたため、より一層柔軟な対応が求められました。
そこで同社では、長年の“当たり前の慣習”であった業務のやり方を変革するため、請求書処理ワークフローをPower Platformでデジタルに置き換えるプロジェクトがスタートしました。
Power Platform導入にあたってのポイント
デジタル化できるツールを導入していくにあたり、まず実現したいこととして主に2つに焦点を絞りました。
- 承認フロー全体の可視化とアラート通知ができ、現行業務に起こり得るリスクを抑制
- 場所を問わずにデジタルで申請/承認が行えることによる業務効率化・コスト抑制
その上で、2022年1月に施行されたに電子帳簿保存法に対応可能な製品を選定しようと考えていました。
さらに、ツールを選ぶにあたり、同社では3つの選定ポイントをあげました。
- 社員が慣れやすい製品を選ぶ
- 柔軟性や拡張性から将来性のあるツールを選ぶ
- 選んだ製品における実績と対応力の高いベンダーを選ぶ
それぞれ解説します。
社員が慣れやすい製品を選ぶ
新しいツールを導入する上で、社員に活用を定着させるためには慣れ親しめるUI/UXのものを選ぶとよいとされています。同社ではもともと、Microsoft 365を利用していました。Power Platformはマイクロソフト社の製品であり、見た目や操作性などで親和性があり、慣れやすいと考えました。
また、Microsoft Entra ID(旧Azure AD )やMicrosoft 365と連携できる点でも優位性があります。
実際に同社では今回の要件を満たせそうなクラウド製品をいくつか試してみましたが、使い勝手が似ていたことは製品選定の大きなポイントとなりました。
柔軟性や拡張性から将来性のあるツールを選ぶ
Power Platformは、柔軟性や今後の拡張性といった観点でも優れています。IT部門以外の方でもソースコードを書かずにシステム構築できるので、ゆくゆくは現場の社員がそれぞれの業務を自分たちで効率化していくことができるのではないかと考えました。
DXを推進している企業にとっては、将来的な展望も見据えられる製品でしょう。
選んだ製品における実績と対応力の高いベンダーを選ぶ
今回のPower Platformの導入にあたり、ITベンダーの支援を依頼しました。
Power Platformは現場の社員でもシステムを作ることができるローコードツールです。しかし、最初の導入時や今回のような大掛かりな業務フロー構築時には、ベンダーの知見が欠かせないでしょう。
シーイーシーからは、Microsoft TeamsやOutlookなど、Microsoft 365との連携を意識した提案がありました。さらに、Dynamics 365やDataverseなどマイクロソフト製品の導入実績も豊富であったため、シーイーシーの導入支援サービスを選択しました。
また、電子帳簿保存法に適応するための要望に対して柔軟に提案・対応し、マイクロソフト社に掛け合っていたこともシーイーシーへの発注ポイントとなりました。
実際にプロジェクトが始まってからも、要件定義段階から実際に動く画面を見ることができたり、その画面を見ながらインタラクティブに要望を伝えるなど、プロジェクトはスムーズに進みました。
Power Platform|マイクロソフト クラウドサービス統合ソリューション[Convergent®]
Power Platformに業務フローを置き換えた効果
お話を伺った2021年12月の時点ではトライアルの段階でしたが、試算上年間2,000時間相当の業務負荷削減ができる見込みとなりました。今後ワークフローのRPA化が進むことで、さらに下記の業務にかかる時間が削減されていくでしょう。
- 回覧に必要な紙の文書
- 重複する申請や記入作業
- 紙の管理、仕分け、整理
- 紙を運ぶ人手と時間
- 経理部門の目視確認や手作業
- 申請・承認のための出社
現場の社員からは、「承認フロー全体が可視化された」「アラート機能などで漏れやダブリの目視確認作業がなくなる」「リモート環境でもできる」など喜びの声が上がっています。
今後のPower Platform活用展望
今後同社では、Power Platformの活用、特にPower Automateを活用した自動化・RPA化を進めていく予定です。さらに、全社でIT教育を進めることでDXの機運を高めていき、現場の社員でもPower Platformを活用できるようにしていきたいと考えています。
開発規模が大きいときはベンダーによる開発支援が有効ですが、日々の業務における細かい業務の効率化やデジタル化などは、現場の担当者でも開発できます。中でもPower Automate Desktopは各個人PCにも搭載されています。各社員のリテラシーが向上することで、業務効率化が進んでいくでしょう。
まとめ:Power Platformの活用で社内DXを促進
いかがでしたか?
DXに向けた道のりは長く、まずは目の前のアナログ業務をデジタルに置き換えていくことが重要です。
今回はPower Platformにおける事例を紹介しましたが、このようなソリューションの紹介や導入に向けたご相談は随時承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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