おいしい海苔づくりは湿度管理が命!湿度管理をリアルタイムに可視化したIoT導入事例
IoTを活用した工場の管理は、多くの企業で取り組みが始まっており、成功事例も増えてきています。今回ご紹介するのは、機械化のネックとなった湿度管理の問題をIoTで解決し、生産効率アップに取り組んだ海苔加工工場の事例です。
生産ライン機械化の壁は湿度管理のデジタル化
1958年に長崎県で設立された株式会社大洋食品は、水産加工物のなかでも、特に味付け海苔など「乾物」に類する食品を製造・販売しています。この乾物を製造するうえで重要なポイントは、いかに乾燥した状態を保つかという点です。人手不足の問題解消のため、海苔加工工場の機械化を進めてきた大洋食品。しかし機械化の障壁となったのが、それまで人の手で行なってきた湿度管理でした。そこで工場内の湿度管理問題をIoTの活用により解決しようという取り組みが始まりました。
生産能力向上の妨げとなる湿気問題
大洋食品の主な事業は水産加工品の製造・販売です。そのなかでも大村工場は海苔製品の製造拠点として、月産700~800万枚の生産能力を持っています。少子高齢化や地方都市での若者の減少などによる人手不足問題の影響もあり、近年は生産ラインの機械化を積極的に進めてきました。
機械化は生産能力の向上を実現する半面、少なからずデメリットを伴います。そのひとつが、工場内の湿気が多くなった際に裁断片などが機械に付着してしまい、そのたびに機械を止めて洗浄しなければならない回数が増えてしまうことでした。生産効率を落とさないためにも、工場内の湿度管理は重要な課題となっていました。
大村工場ではこの湿度管理問題に対し、計測機による温湿度チェックを行なっていました。1日1回の頻度で担当者が工場内の各所を回り、計測していたのです。この点検作業によって、工場内における日々の温湿度の状態を把握していましたが、各所におけるリアルタイムでの温湿度変化まではとらえ切れず、大変な労力もかかっていました。
IoTで湿度をリアルタイムに「見える化」
リアルタイムで温湿度変化がとらえられなければ、どのような事象が、工場内の湿度に大きな影響を与えているかが見えません。そして、見えなければ具体的にどのような対策を取るべきかも分かりません。
そこで大村工場は、以前からペーパーレス化や業務効率向上に関する社内IT化支援を行っていたシーイーシーに協力を依頼し、海苔製品の生産効率向上策に着手することにしたのです。両社はまず、レノボのIoTゲートウェイ「ThinkCentre M90n-1 Nano IoT」とIoTミドルウェア「Gravio」の試験採用を行いました。工場内スペースの有効活用も考慮し、エッジ・コンピューティングに特化した超小型デバイスである「ThinkCentre M90n-1 Nano IoT」が採用されたのです。そして、生産ライン各所の温湿度をリアルタイムで可視化して臨機応変に対処することで、湿度による影響を抑え、生産効率の向上を目指しました。
リアルタイムでの湿度管理により、生産効率アップが可能に
大洋食品の海苔事業部工場長 音湘氏によると、資材の搬入や製品の搬出に伴う作業者の出入りやその作業員の発汗など、工場内の湿度に影響を与える事象はさまざまだと言います。そのため、まずは各所の湿度データをリアルタイムに収集し、変化をとらえることが必要とされました。
そこでシーイーシーは、Gravioによる温湿度データの収集・加工を実施。工場内で収集・加工されたデータは、そのまま工場の事務所内にあるPCに転送・可視化されます。そして可視化された温湿度データは1分刻みで更新されるようになっています。さらに温湿度の異常値が検出された際には、アラートを発する機能も実装されました。
また工場施設内のネットワーク環境であれば、Windowsが標準で持つリモートデスクトップサービス(RDS)を使って、簡単に事務所からも施設の温度状況が把握できる仕組みになっています。さらにクラウドとの連携も可能で、異常値が検出された際のアラートはスマートフォンなどに通知することも可能です。
工場内の温湿度をリアルタイムで可視化できれば、裁断片などが機械に付着するリスクを事前に把握し、機械を止めなくてはいけない回数を削減できると大きな期待が寄せられています。
季節に左右されない安定した生産と品質管理
IoT導入により、リアルタイムで湿度管理が可能になった今、なかでも最も大きな期待を集めているのは、季節に左右されない安定した生産の実現です。これまでは、湿度の高い梅雨時(つゆどき)に海苔製品の生産効率が10%程度落ちてしまうのが通常でした。専務取締役海苔事業部統括 中山氏によれば、この時期をどう乗り切るかが例年の課題だったといいます。
さらに中山氏は、loTソリューションを通じて湿度管理を徹底することで、梅雨時であっても工場内を快適な状態に保ち、季節変動の少ない安定した生産を実現できるのではと期待を語りました。
品質・生産効率向上を叶えるシーイーシーのIoTソリューション
今回は海苔の生産におけるシーイーシーのIoTソリューションの活用をご紹介しました。
IoTを活用することで、これまで人の手で行なっていた作業をデータ化・可視化し、さらなる品質管理の精度アップ・効率化を実現できます。さらにセキュリティサービスプロバイダーとしての技術を活用し、セキュアなデータ転送、クラウド連携、データ分析、湿度異変時のアラート通知機能の実装などにも取り組んでいます。