DXレポート2を読み解く―企業が “今” 取り組むべきアクションとは―

経済産業省が「DXレポート2」を公表
コロナ禍で明らかになったDX(デジタルトランスフォーメーション)の本質とは


経済産業省が、2020年12月28日に「DXレポート2(中間とりまとめ)」を公表しました。これは2018年9月に公表された「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」に、その後2年間の時代の変化、コロナ禍の影響を加味して、日本のDXを加速していくための課題、企業のこれからの対策についてまとめた中間報告です。本記事では、その概要を解説します。

目次

これまでのDX政策とその結果

2018年に公表された「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、企業および社会の成長のために必要なDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性について提示していました。しかし、2020年初頭まで、本格的にDXを推進していた企業は少数派だといえるでしょう。DXに未着手の企業では、そもそもDXについて知らない、理解がないケースも見受けられます。また「DXレポート2」では、2018年の「DXレポート」によって、「DX=レガシーシステム刷新」など、本質的ではない解釈を生み、「現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である」という認識を生んでしまったと報告しています。そのため、企業によってDX推進状況が大きく異なる結果となっています。

コロナ禍で明らかになったDXの本質

年頭に国内でのコロナ感染報告があって以来、4月の緊急事態宣言、感染拡大の第二波、第三波の到来と、2020年はコロナの影響を大きく受けた年だったといえます。2021年も、再度の緊急事態宣言が発令され、まだ収束の兆しは見えていない状況です。

感染拡大防止のために、企業はその事業活動において、大きな変化を余儀なくされました。先送りしてきた課題が、コロナ禍により一気に表面化したのです。押印、客先常駐、対面販売など、これまで当たり前だと思っていた「業務・慣習」が変革の阻害要因になり、事業環境の変化に迅速に適応できた企業と、そうでない企業とで差が開いてきてしまっています。

「DXレポート2」において、コロナ禍で明らかになったDXの本質(必要性)は、

  • 素早く変革し続ける能力を身につけること
  • ITシステムのみならず企業文化(これまでの固定観念)を変革すること

としています。ITシステム、クラウドシステムの導入といった問題だけではなく、「企業文化の刷新」というステップアップが必要な時代となったのです。

コロナ禍によって高まったDXの緊急性

コロナ禍は、これまでの「当たり前」に大きな変化をもたらしました。この変化は、コロナ禍が収束したとしても、完全には元に戻らないでしょう。ニューノーマルと呼ばれる新しい生活習慣、ビジネス習慣が定着していくと考えられています。以前は「対面しなければ顧客を説得できない」と思い込んでいた商談においても、オンラインで十分な成果を出している企業が存在します。テレワークの導入により、「通勤の苦がなくなった」「時間に余裕ができた」「効率が良い」などの利点を実感している企業も多くなっています。今後テレワークという働き方は、完全なテレワークと、どうしても出社が必要な業務に限定された出社勤務とのバランスを取った、ハイブリッドワークになっていくことでしょう。

こういった社会の変化に対応するには、デジタル化が不可欠です。テレワークの導入にとどまらず、押印という文化の見直し、社内のビジネスフローの革新、デジタル化を前提とした顧客目線でのビジネスの改革など、仕事の進め方を変えなければ、今後デジタル競争の敗者となる可能性が高いのです。これは、企業の変革を推進するパートナーとして、ベンダー企業も同様です。

超短期、短期、中長期で取り組むべき政策と企業のアクション

では、企業がDXを推進するにあたって、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

超短期(事業継続・DXのファーストステップ)

まず超短期、事業継続を可能とするために今すぐに取り組むべきこととしては、

  • 業務のオンライン化
  • 業務プロセスのデジタル化
  • 顧客設定のデジタル化
  • 従業員の安全・健康管理のデジタル化

があげられています。これらは、市販製品やサービスを導入することで解決が期待できます。

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加えて、「経営者、IT担当者、事業部門でDXについての共通認識も持つこと」「経営者がDXを先頭に立って推進すること」も忘れてはいけません。経営者自身がDXを理解し、旗を振って従業員を先導する必要があります。
また、DXに関する早急な認知と正しい理解も重要です。

<図1:コロナを契機に企業が直ちに取り組むべきアクション>
<図1:コロナ渦を契機に企業が直ちに取り組むべきアクション>
出典:経済産業省 「DXレポート2(サマリー)」の資料を基に作成

短期(体制整備とDXの実践)

次に短期的な取り組みとしては、DX推進の組織体制の整備とDXの実践があげられています。経営層(CIO/CDXO)を置き、ガバナンスを確立。多彩な人材の確保と活用、リモートワークなどのためにインフラの整備を行います。さらに環境の変化を踏まえ、業務プロセスをデジタル化する前提で見直し、DXの推進状況を定期的に把握するといったことが重要です。

<図2:本格的なDXを進めるための体制整備とDXの実践>
<図2:本格的なDXを進めるための体制整備とDXの実践>
出典:経済産業省 「DXレポート2(サマリー)」の資料を基に作成

中長期(迅速に変わりつづける能力の獲得)

中長期的には、柔軟に社会の変化、ビジネス環境の変化を把握し、内製で迅速に対応できる開発体制の整備が必要となります。DXを対等な立場で支援できるベンダーとの協力体制の確立も欠かせません。また、社内でのDX人材の確保も求められます。

<図3:デジタル企業へ“迅速に変わりつづける能力”の習得>
<図3:デジタル企業へ“迅速に変わりつづける能力”の習得>
出典:経済産業省 「DXレポート2(サマリー)」の資料を基に作成

超短期・短期・中長期視点の概要について触れましたが、実際にどんなことをすればよいのでしょうか。具体的な取り組みの事例は下記記事で概要をまとめております。こちらも合わせて読むことで、具体的なDX推進イメージを沸かせることができると思います。

>>社内DXを推進する成功のポイント【3つの事例とともに解説します】

また、実際に自社のDX推進を考える場合、思考フレームワークのようなガイドがあると考えやすくなります。それには、DX認定制度の申請・取得を目指すとよいでしょう。

DX認定制度とは、「国が策定した指針を踏まえ、優良な取組を行う事業者を、申請に基づいて認定する制度」です。企業のDXに関する自主的な取り組みを促すために経営者に求められる対応をまとめている「デジタルガバナンス・コード」というものがあります。

こちらに記載されている基本的事項に対応して考えると、自然とDX戦略が形づくられていきます。
DX認定制度の詳細については、IPA(情報処理推進機構)のこちらのページをご確認ください。

下記記事では、DX推進のロードマップや戦略の立て方について詳しく解説しています。

>>DX戦略とロードマップの立て方【まずはデジタル企業を目指しましょう】
>>DX戦略立案に役立つ思考フレームワークの使い方5選と3つの注意点

ぜひこちらの解説に当てはめて、DXについて考えてみてください。

目指すべきデジタル社会の姿とは?

「DXレポート2」ではこれまで記した内容を踏まえて、「目指すべきデジタル社会の姿」にも言及しています。それは次のようなものです。

  • 社会課題の解決や新たな価値、体験の提供が迅速になされ、安心・安全な社会が実現
  • デジタルを活用してグローバルで活躍する競争力の高い企業や、カーボンニュートラルをはじめとした世界の持続的発展に貢献する産業が生まれる

上記は、「DXの目的はデジタル化の推進、デジタルサービスの導入だけではなく、それに基づいた社会の変化」にあるということを示しています。変化し続ける社会のなかで新たな価値を生み出し、安全で安心して暮らせる社会を作り出す「SDGs」も見据えて、世界の発展に貢献できる産業を生み出し、成長させることがDXの究極の目標といえるのです。

そうした目標も視野にいれ、2021年度税制改正法案には、企業のDX推進を促すための「DX投資促進税制の創設」が盛り込まれています。適用を受けるために必要な提出書類もありますが、こうした情報を集めて、DX推進の促進剤としていきましょう。

参考情報

デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました (METI/経済産業省)


DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

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