DX戦略立案に役立つ思考フレームワークの使い方5選と3つの注意点

DXを成功に導く、戦略を立てるための思考フレームワークについて解説します


日本企業がDXを推進できなかった場合、2025年以降毎年12兆円もの経済的な損失が発生する可能性があると警鐘を鳴らした経済産業省は、企業のDXを促進するためにさまざまな施策を発表しています。

>>DXレポート2を読み解く―企業が “今” 取り組むべきアクションとは―

その中の一つが、「デジタルガバナンス・コード」です。「DXを進めたいが、どのように考えていけばよいかわからない」といった方にとって、DX推進方法を考える一助となるでしょう。「デジタルガバナンス・コード」についてはこちらの記事で解説しています。

>>DX戦略とロードマップの立て方【まずはデジタル企業を目指しましょう】

今回は、「DX成功のために考えることはわかったけど、どのように考えればよいか具体的な方法を知りたい」といった方向けに、戦略を立てるための思考フレームワークについて解説します。3Cなど基本的なフレームワークですが、DXに応用して考えるととても整理できるはずです。

本記事を読むことで、DX推進の入り口としてどのような情報を整理すべきかがわかり、周囲を巻き込んだ具体的なアクションにつなげることができます。戦略といっても10社10通りですので、まずは情報を整理して自社に合うDX戦略を立てていきましょう!

目次

戦略作りのための思考フレームワークの重要性

DX戦略を立てるために、まずは自社の現状分析や今後どうなっていきたいのかを整理する必要があります。そこで便利なのが、フレームワークを使った整理です。フレームワークにはあらかじめ考えるべき観点やテーマが与えられているので、それに沿って情報を当てはめるだけで整理ができます。

今回DX戦略立案のために応用できそうなフレームワークとしてご紹介するのは下記の5つです。

  • ビジョン・ミッション・バリュー
  • 3C分析
  • PEST分析
  • SWOT分析
  • バリューチェーン分析

ただし、当てはめるだけではDX戦略まで応用することは難しいでしょう。ポイントは、各フレームワークで整理した情報をつなげて考えることです。

例えば、「3C分析で整理した情報をさらに深堀りするために、SWOTやバリューチェーンを考える」「3C分析の前提として、業界全体の状況を整理するためにPEST分析で整理してみる」などです。

一つひとつの分析を独立させるのではなく、つながりをもたせて考えることで、情報にストーリーが生まれます。そのストーリーをDX戦略に反映させていくと、「なぜこの戦略や施策が必要なのか」といった問いにも答えることができ、筋の通った戦略にすることが可能です。

それでは、各フレームワークの使い方や整理する上での観点について、次項より解説します。

デジタル企業に変革した先にある【ビジョン・ミッション・バリュー】の策定

すでに企業理念やビジョン・ミッション・バリューがあるとは思いますが、デジタル企業に変革した先にあるものを改めて策定したり見直したりする必要があるかもしれません。

下記3つの観点で議論し、ブラッシュアップしていきましょう。

先にビジョン・ミッション・バリューの策定があることが理想ですが、状況に応じてこれ以降記載する各分析をしてから見つめ直しても良いでしょう。

本当に提供するべき価値が見えてくる【3C分析】

Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の頭文字を取ったフレームワークです。各項目を以下の観点で考えてみましょう。

3Cの観点で整理した情報は、ビジョン・ミッション・バリューと絡めて考えてみることで、本当に提供すべき価値が見えてきます。競合の観点は、5フォース(Forces)分析を使うと、より詳細に整理することができます。

DX推進時のポイントは、自社が提供したい「価値」はデジタル技術でどのように実現できそうかを考えることです。その際、顧客の利便性を追求するために「ユーザーファースト」の観点を持つと、アイデアが促進されるでしょう。

現在と未来を読み解く【PEST分析】

Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点で考えるフレームワークです。下記のような観点で考えてみましょう。

  • Politics:顧客に届けたい価値にとって、規制/追い風になっている政策は?
  • Economy:自社や業界を取り囲む経済状況の現在と今後の予測は?
  • Society:製品やサービス、文化にはどのような流行がある?
  • Technology:どんな技術が実現したい方向への近道?

3C分析は基本情報の整理であれば、PEST分析は3Cを取り巻く環境分析と言えます。現状行っているビジネスやこれから行うビジネスの次の一手は、どういう道にいけば追い風なのかという観点を用いると、考えが進みそうです。

攻める領域を決める【SWOT分析】

3Cの「自社」をさらに細分化して、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threats(脅威)の観点で、事業状況を整理できます。さらに、PESTと組み合わせると、「自社の強みは今後も継続できそうか?」などを検討することができます。また、SWOTをクロスさせて考えることで、打つべき戦略が見えてくるでしょう

特に、デジタル化や環境の変化によって生まれる機会や脅威などを考えるとよいでしょう。例えば、「自社の強みはコロナ禍のような環境の変化にも迅速に対応できるか」「○○という技術のデジタル化は脅威だが、自社の強みと組み合わせることはできるか」といった観点です。

デジタル企業としてあるべき姿を明確にする【バリューチェーン分析】

上記で整理・分析した自社の商材やサービスが顧客に届くまでに、自社が行う一連の流れを整理してみましょう。特にここでは、それぞれの活動にどのようなデータやデジタル技術の活用をするのかを考えると、具体的なDX施策に結びつきやすくなります

バリューチェーン

いよいよDX戦略立案

ここまでの分析ができれば、いよいよ戦略立案です。策定したビジョン達成に向けて、あるべき姿と現状のギャップを洗い出し、どのようなステップであるべき姿の実現に向かうのかを描いていきましょう。戦略と言っても難しく考える必要はありません。まずはやりたいこととやらないこと、優先順位を整理し、概要を決めます。

特に、「クロスSWOT分析やバリューチェーン分析で出てきたものを実現していくためには何が必要なのか」という観点で整理すると、データやデジタル技術を活用した競合優位性のあるDX戦略を立てることができるでしょう。

例えば、「クロスSWOT分析のSO領域を積極展開するために、○○のデータを活用してリソースの最適な分配ができないか」「バリューチェーンにおける□□の部分はRPAに置き換えることはできないか」などです。

その後、戦略を実現するための人材・組織や環境、IT投資戦略について考えます。どのような人材・組織であればDX戦略を実現できそうか、どのような働き方の環境やIT環境があればDX推進ができるのかといった観点です。必要な人材・組織と環境がわかれば、あとは揃えるだけ。このように考えていくと、組織戦略や採用戦略までつながりますね。

最後に、DX戦略の成否を測る指標を決めましょう。財務成果に帰着するKGIを設定し、途中の指標となるKPI目標値を決めます。

3つの注意点

なお、注意点も3つあります。

①これまでのデータや実績を元に戦略を立てること

戦略を立てる上では課題の明確化が重要です。そのためにさまざまな観点で分析をしますが、その分析が「こうだろう」という勘や憶測では、間違ったDX戦略となる可能性があります。
これまでのデータや実績を客観視した上で、DX戦略を考えていきましょう。

②会社全体での協力体制を構築すること

DXは会社全体を変革するものです。DX推進を任命した一社員の気合と根性だけでは実現しません。経営陣を始めとした全社員の協力がなければ、どんなにいい戦略を立てても、絵に描いた餅になってしまうでしょう。

そのため、「DXとはどのようなものか」「自社がDXに取り組む意義は何か」などの議論からはじめ、DX推進担当者だけでなく経営陣や社員を巻き込んで意識を統一しておきましょう。

③セキュリティの観点も必ず盛り込むこと

あらゆるデータやモノがデジタル技術でつながるDXを行う上では、サイバーセキュリティ対策の強化は不可欠です。注意すべきセキュリティに関しては下記記事で解説をしていますので、合わせてご覧ください。
>>IPA「情報セキュリティ10大脅威2020」振り返り! 「10大脅威2021」もICT未来図編集部が独自予想!

まとめ

いかがでしたか?
DXの戦略を考えるにあたって、具体的にどのように考えていけばよいのかが整理できたと思います。他にも応用できるフレームワークや考え方がありますが、まずは今回ご紹介した5つのフレームワークで整理していくことをおすすめします。

企業としてありたい姿ややりたいビジネスモデルから逆算して考えていくことによって、狙いを持ったDX戦略の推進をしていくことができるでしょう。特にバリューチェーン分析は、現状の業務の流れを客観視することができ、何をデジタル化したらよいかお困りごとや理想の可視化がしやすいと思います。

全体像が見えたら、着手する箇所を決めましょう。戦略を決めると言っても、DX推進の途中で方向転換や軌道修正しても問題ありません。特に業務そのもののデジタル化についてお困りの際は、ぜひシーイーシーの無料相談会をご活用ください。

事例のご紹介ややりたいことの要求定義など、業務のデジタル化・DX推進に伴走します。お悩みに応じたソリューションを一緒に考えましょう。

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