Azure Virtual Desktop(AVD)の目玉機能「マルチセッション接続」とは?
仮想デスクトップサービスの中でも、安価なクラウドサービスとして利用できるDaaS。さまざまなサービスがありますが、Windows 10のマルチセッション接続が可能な「Azure Virtual Desktop(AVD)」が大きな注目を集めています。今回は、Microsoft社が提供する仮想デスクトップサービスであるAVDだけが持つ機能「マルチセッション接続」について、詳しく説明していきます。
AVDの仕組みやメリットなどは下記の記事でも解説しています。
AVDとWindows 365の違いや選択のポイントについては下記記事で解説しています。
AVDのマルチセッション接続とは
AVDの基本性能として注目されるマルチセッション接続は、他の接続方式とはいったい何が違うのでしょうか。それぞれの方式についても触れながら説明します。
デスクトップの仮想化には2つの方式がある
デスクトップの仮想化は、大きく分けて2つの方法があります。
SBC(Server Based Computing)方式
1ユーザーに対し環境を割り当てるのではなく、サーバーOS上のアプリなどを複数のユーザーが共有して利用する方式です。コストを抑えられるという魅力がある一方で、複数のユーザーで1つの環境を共有するため自由度が低く、実行できないアプリもある点がデメリットです。
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)方式
仮想サーバー上に作成された仮想デスクトップを1ユーザーごとに1台ずつ割り当てる方式です。物理PCとほぼ同等の自由度があるメリットの反面、ユーザーの数だけ仮想マシンが必要となりコストが高くなりがちです。
Windows 10/11 のマルチセッション接続に対応した唯一のサービス
AVDの特徴は、Windows 10/11 OSの1つの仮想マシンを複数のユーザーで利用できることです。つまり、安価な構築に適した「SBC方式」と、高い自由度が手にできる「VDI方式」のいいとこ取りをした方式といえるでしょう。
さらに、Windows 10/11 のマルチセッション接続に対応しているのは、AVDだけです。1台の仮想マシンに対して複数ユーザーが接続できるため、コスト削減が見込める点も注目される理由なのです。
マルチセッション接続により得られるメリット
マルチセッションがもたらす恩恵には、どんなことがあるのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。
(1)最大の効果はコスト削減
従来はユーザー単位で仮想マシンを割り当てたり、サーバーOSを複数のユーザーで利用したりする必要がありました。また、VDI環境を構築するには、設計から開発までに時間がかかり、開発期間の長期化に伴ってコストも膨らむケースもありました。
しかし、AVDであればクラウド上に仮想マシンによるデスクトップ環境を用意できるため、初期費用のコストダウンが図れます。また、管理コンポーネントのほとんどがAzureで用意されるため、運用面での工数も削減できます。最新のOSやアプリケーションのアップデートもMicrosoft社から提供されるなど、非常にメリットの多いサービスといえるでしょう。
(2)1人でも複数人でも使える
Windows 10を1人で使っても、複数人で使っても、基本的に利用料が変わりません。そのため、ミニマムでのスタートが可能であり、立ち上げまでの時間も大幅に短縮できるメリットがあります。将来的に、組織が大きくなってユーザーが増えたとしても、組織規模にあわせてスムーズにデスクトップ環境を利用し続けることができます。
(3)どこからでも接続可能
ブラウザーとリモートデスクトップクライアント、どちらからでも接続できるうえ、Webブラウザーの種類も限定されません。Windows/macOSはもちろん、クライアントアプリ、Android/iOSアプリ、Linux OSからも接続が可能です。既存の環境を大きく入れ替える必要がないため、導入しやすいサービスといえます。
(4)Microsoft 365のOfficeが使える
Windows10とOfficeの同時利用ができる点もメリットの1つです。サブスクリプションモデルのOffice 365 があれば、Windows 10とOfficeの同時利用が可能です。
AVDのマルチセッション接続利用にあたっての確認事項
非常に利便性の高いマルチセッションですが、利用するために確認すべき点もあります。従来の接続方式にはなかった注意点もありますので、ぜひ確認してみてください。
AVDに必要なライセンス
Windows 10/11のマルチセッション接続では、次のライセンスが必要です。
- Microsoft 365 E3/E5
- Microsoft 365 A3/A5/Student Use Benefits
- Microsoft 365 Business Premium
- Windows 10 Enterprise E3/E5
- Windows 10 Education A3/A5
- ユーザーあたりのWindows 10 VDA(EAなどの包括契約が必要)
なお、AndroidやiOS、Linuxの場合は、Windows 10 Enterprise E3 VDAがあれば利用可能です。
AVD導入時の注意点
メリットの多いAVDのマルチセッション接続ですが、導入時には注意しておきたい点があります。
ユーザーごとのカスタマイズができない
自社の用途や利用状況に応じて自由にカスタマイズできる点がAVDの特徴の1つ。ですがマルチセッション接続では、複数ユーザーが同じ環境を共有するため、ユーザーごとのカスタマイズはできません。
パフォーマンスの低下
Windows 10/11マルチセッション接続では、セッション単位でリソース制限をかけることができません。そのため、リソースを過剰に使用してしまうユーザーがいる場合、他のユーザーのパフォーマンスに悪い影響が出てしまう可能性があります。
通信料金
アウトバウンド通信は従量課金制(1GBあたり13.44円)となっているため、コスト管理が欠かせません。通信コストを抑えるためには、できるだけAzureデータセンター内で通信を完結できるようにするなど、工夫が必要です。
認証方法
AVD接続時には、AVDサービスへ接続するためMicrosoft Entra ID(旧Azure AD )認証を行ったあと、セッションホストに接続する際にADドメイン認証も行われます。そのため、ADのユーザー情報と同じユーザーIDでAzure ADに同期する必要がある点に注意が必要です。
プロファイル管理
マルチセッション接続では、ユーザーが接続を試みるたびに、異なる仮想マシンを利用することになります。そのため、前のセッションで作業して保存したファイルが見つからなくなる点には注意が必要です。各種データ(ドキュメント、写真など)やユーザーが固有に設定した内容は、すべてユーザープロファイルに保存することが欠かせません。
AVDの構築から運用の流れについては下記の記事でも解説しています。
AVDのマルチセッション接続の導入事例
マルチセッションを業務で活用することで低コストかつ信頼性の高いリモートワーク環境を構築することも可能です。
詳しくは下記の記事で紹介しています。
AVDの活用例や導入事例についてはこちらで紹介しています。
まとめ
AVDは、Windows 10/11のマルチセッション接続に対応した唯一のサービスであり、その恩恵はさまざまな形で受けることができます。その一方で、複数ユーザーが同じ環境を共有するため、ユーザーごとのカスタマイズができないといったデメリットもあります。ですが「VDI環境構築が不要」「テレワークやリモートワーク環境での高度なセキュリティ」「従量課金制によるコスト削減」など、マルチセッション接続だからこそ得られるメリットのほうが多いといえるでしょう。マルチセッション接続の機能を自社のニーズと照らし合わせて、ぜひ導入を検討してみてください。
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